静坐の友(季刊誌)

第14号 先師に導かれて -不二登禅を- 岸和田 寺田 一清 氏

tomo14_1 先師森信三先生からご指導を頂くようになってから早や四十七年を迎えようとしております。ご生誕二七年没後二十年を経過いたしました。そして静坐の師、岡田虎二郎先生の存在も存じあげるようになりましたのも、森信三先生のお陰です。先生十五才の時、小学校の給仕をお務めのころ、岡田虎二郎先生の偉業に接しられて以来、静坐の中心眼目たる「腰骨を立て貫く」すなわち「立腰」だけはご生涯を賭けて、自学自習、努力精進せられたのでした。そして後年「立腰教育のご提唱によって、広く静坐の精髄を教育的に普及せられました。わたくしもその感化影響をたまわり、現在馬齢八十六歳を重ねる現在、各地読書会の参加や会報執筆やお招きに応じられるのも、思えば、この「立腰」精進のお陰であり、師恩の広大無辺を痛感いたしております。

 かつて松山の国民詩人たる坂村真民先生と対談させて頂いた際、「弟子たるものは、師の年齢だけは超えねばなりません」の厳命を頂きました。さて森信三先生は、九十七歳までご存命でしたから、わたくしの念願としては、健康白寿を目指したいと願っております。

 いま一つ、健体康心の師として多大のご指導を頂いた大阪八尾の甲田光雄先生の仰せには「九十歳になったら二人きりで富士山へ登ろう」とのお約束です。この二大目標すなわち健康白寿と、九十歳にて富士登頂をなんとか果遂したいと念願しております。それがためには、岡田虎二郎先生の「行く先を忘れて登る不死の山」の一句を念じつつ、毎年不二登拝を志念して、今まで五回遂行いたしております。

 さてそれには、日頃から立腰に加えて呼吸法が何より肝要事にて「サムハラ・サムハラ」の梵語を称えるよう心掛けております。サムハラは、辛抱・耐忍を意味し、常時サムハラの一呼一吸を念じる次第です。(不尽叢書刊行会代表)